「相続争いってお金持ちの家のことでしょう?」と思っている方。
それは大きな間違いです。
今のうちに考えておくべきですよ。
「争族と言う言葉を目にしたことがあるでしょうか?
これは「相続」で家族が揉めて争うことを表した造語です。
資産家の一族が資産を巡って骨肉の争いをするようなサスペンスドラマや小説を時々目にします。
巨額の遺産を巡って一族が争いを繰り広げるような内容が多いですね。
「自分の家はそんな財産なんて無いから相続争いとは無関係」と考えている方も多いと思いますが本当にそうでしょうか?
実は多額の遺産が無くても相続争いは起こるのです。
1.平凡な中流家庭が揉める相続

Aさんは普通のサラリーマンとして定年まで真面目に働きました。
家族は妻と長男・次男の四人家族。そんなAさんが無くなり、妻と子供2人が自宅と多少の預金を相続します。
長男は結婚して元々の自宅で母親と同居。次男も結婚し他に住居を持って住んでいました。
この時点で母親と長男家族が住んでいる元々の自宅は、母親と長男・次男の共有(共同で所有する事)となっています。
やがて母親が亡くなり、元々の自宅の母親の持分(もちぶん:所有の割合の事)は長男と次男が半分ずつ相続し、長男と次男2人の共有財産になります。
次男は外に家を購入しており、住宅ローンを抱え、子供の教育費もかかっています。
決して生活に余裕があるわけではありません。
そこで次男の妻がポツリと言います。
「長男さんの所は住宅ローンも無いし、余裕があって良いわよね…。アナタ長男さん家の持分を半分持っているんだから少しお金をもらってよ。なんなら売却してお金で半分もらう権利があるんじゃないの?子供が可愛いならそれくらいの事言っても良いでしょ?」
仕方がなく次男は長男に言います。
「兄さん、この家の俺の持分を金でくれないか?」
長男はそんな金は無い、と取り合いません。
そこで長男の妻が一言「私は、お母さんの老後の面倒をずっとみてきたのに、そんな苦労もしていない人達が今更お金をくれなんて図々しい。」

この後この兄弟の間には争いが起こり「共有財産分割訴訟」にまで発展してしまいます。
また、この争い以降、兄弟としての関係は完全に断絶してしまうのです。
2.家で商売をやってたら…
1.で書いたケースでもっと面倒なのは、父親が家で商売をやっているようなケースです。
例えば家が自宅兼店舗で「蕎麦屋」をやっていたとします。
この蕎麦屋を長男が継いでいた場合。
自宅兼蕎麦屋を売らなければならないようなケースに発展してしまえば、長男は家ばかりか仕事も失ってしまうことになりかねないのです。
親としては長男が蕎麦屋を継いでくれてとても喜んでいたのに。
結果として長男と家族を路頭に迷わせてしまうことになってしまうのです。

「自分の子供たちは仲が良いから心配ない」と思ったら大間違いです。
私が見てきたケースの多くは仲良しの兄弟が揉めて断絶してしまったものです。
子供はずっと子供のままでは無く、結婚して家族ができれば、それぞれの事情というものができます。
また、本人は良くても配偶者が黙っていないというケースも多いのです。
そして、争いは両親が亡くなってから起こることが多いのです。
そうならないためにはどうしたら良かったのでしょうか?
3.遺言を書くだけでは足りない?

相続で争いにならないための方法として「遺言」を書く方法があります。
父親や母親が、生前に財産の分け方を「遺言」という形で残しておくものです。
遺言は本人が亡くなってから効力を発し、法定相続という民法上の分割方法よりも遺言による分割方法が優先されます。
1.のケースでは長男に自宅の土地建物をすべて相続させると書けば良いのです。

「遺言だけで本当に大丈夫ですか?」
遺言が優先されるから大丈夫でしょ?
と思ったら大間違いです。
法定相続人のうち配偶者や子供には「遺留分」という権利があります。
遺留分とは最低限保証される相続の権利で、遺言があってもこの遺留分の請求権を侵すことはできないのです。
4.遺留分を考慮した対策が必要
遺留分は法定相続分の半分と決められています。
遺言で自宅を全て長男に相続させると書いても、次男が請求すれば1/4の権利は次男の物になるのです。
相続で揉めないためには、この遺留分を考慮した遺言を残す必要があるのです。
遺留分にあたる財産をお金で次男に相続させるなどの対策を考えておく必要があります。

改正民法で遺留分の請求は現金で行うようになりますが、お金が無ければ借入れをして支払うか、家を売って払わなければならなくなります。
期限が猶予されることもありますが必ず払わなくてはならないのです。
「相続争いなんてお金持ちだけのもの」ではないのです。
一般家庭でも相続争いは起こります。
家族が争いなく平和に過ごせるために、遺留分を考慮した分割方法を考えておきましょう。
今回はここまで
最後までお読みいただきありがとうございました。
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