東京や大阪などの都会に住んでいるのに、生まれ育った故郷の不動産を相続して持っている方が結構いらっしゃるのです。
使い道が無い不動産はどうすれば良いのでしょうか?
昨年、以前からのクライアントから相談がありました。
「母親から相続した地方の農村部にある不動産の処分したいので動いていただけますか?」
また、年明けにも別のクライアントの紹介の方から、やはり母親から相続した地方の物件の処分を依頼されました。
またきたか(笑)と思いつつ恩を売るつもりで引き受けます。
この手の依頼は、面倒なわりにお金にならないのですが、内心「こんな仕事引き受けるの自分くらいだろうな…」と思うとちょっと楽しくなります。
知らない土地に行くのも好きなので、行楽気分でできます。
現地に行く前にまず、固定資産税納税通知書にある物件所在(住所ではなく、地番表示ですのでややこしい)をもとに、地図で場所を特定するのですが、所有者本人も行ったことがないような場所ですので、これが一筋縄では行かない…。
宅地であれば特定しやすいのですが山林や農地となるとなかなか厳しいのです。
ゼンリンさんが発行しているブルーマップという便利な地図があるのですが、田舎(失礼)の町だと、ブルーマップが無い場所も多いのです。
とりあえず公図と地図を照らし合わせて形から見当をつけていくというパズルのような作業になります。
ある程度目星をつけたら、場所と流通性を確認するために、物件所在地を管轄する法務局と役所、そして現地の実査をします。
そのうえで、処分が可能かどうかを判断し、処分方法を検討するのです。
処分方法や処分の可能性は物件によって異なります。
今回依頼を受けた案件を例にして簡単に説明しましょう。
1.都市計画区域が不動産の流通性を左右する
都市計画区域とは都市計画法によって土地の利用方法のすみわけをするために定められていて、大きく分けて3種類あります。
①市街化区域
都市として整備する区域。建物の建築が認められます。
②市街化調整区域
市街化を制限する区域で、原則として建物は建築できません。
学校など1部の建物は建築できますが、それ以外は特別な許可が必要です。
特に農地となっている場所は、ほぼ開発が認められず、農地法という法律もあるので、原則として農地以外の転用は認められません。
自身で農業をやらない場合は農業従事者に譲渡するか、農地として貸すか、あるいは放置するかのいずれかになります。
③未線引
都市計画区域の定めがない地域です。
建物を建築する事ができるのですが、現況が農地の場合、農地法によって農業用地に指定されていると市街化調整区域内の農地と同じ扱いになります。
都市計画区域を調査した段階で、市街化調整区域の農地と未線引きの農業用地の処分方針は以下の3つに決まります。
◆市や町に寄付する(受け取る可能性は低い)
◆農業委員会の紹介などて、引き取ってくれる農家を探す。
または借りてくれる農家を探す
◆放置する
の3つの選択肢ですが「誰も引き取ってくれない。」「借りてくれない。」ということも少なくありません。
お金にならないと考えた方が良いと思います。
2.開発できる土地の場合
1の都市計画で、建物が建築できて開発できる土地の場合には処分方法も考えやすくなります。
しかし、今回の依頼の中にも一か所ありましたが、ハギレ地のような建物を建てる形状でなかったり、道路に接していないような土地の場合は、隣接地の所有者位しか引き取ってくれません。
安くてもお隣さんに引き取ってもらうしか手がありません。
道路に接していて建物が建てられる土地の場合には流通性がある可能性があります。
可能性があるというのは、過疎地域のような需要が少ない場所では、買い手を見つけるのが難しいからです。
また、田舎(失礼)の土地は安いので、造成などにコストがかかると非常に売りにくくなります。
2メートル以上の高低差があったり、土壌改良が必要であったり、既存建築物の解体撤去にかなり費用がかかれば、土地代がゼロやゼロ以下になることもあります。
ゼロ以下では誰も貰ってもくれません。
開発可能な土地の場合、周辺を見渡して新しい建売住宅が建っていたり、新しい家が多いような場所であれば流通する可能性があります。
ただしニーズが少なく、不動産流通システムが整っていないため大都市圏のようにインターネットに掲載すれば売れるという訳にはいきません。
周辺にめぼしい不動産業者が無ければ、現地に売地カンバンを立てて気長に待つ方法もあります。
しかし確実に処分するのであれば多少安くても隣接地の人への売却や、買い取ってくれる不動産業者や建築業者がいれば買ってもらったほうが良いでしょう。
一般的に大都市圏以外の郊外部の宅地の坪単価は5万円~10万円ほどですが、早めの処分を考えるならそれよりも安くなります。
なお、山林などは山林としての需要が無ければ引き取り手がいません。
隣接地所有者が引き取ってくれるか、市町村が寄付を受けてくれなければ処分は難しいでしょう。
3.不動産の特殊需要
広い平地やロードサイド店舗などが並びにあるような土地であれば、事業系や商業系のニーズがある場合があります。
その場合には、地元の不動産業者ではなく、法人部門などがある大手不動産仲介業者に相談すると、配送センターや倉庫用地、ロードサイド店舗などの買にニーズがある可能性があります。
誰も使わないような地方の土地を持っていると、お金にもならず、固定資産税や草刈り費用などのコストがかかるだけです。
日本の人口が減少の一途をたどる将来では資産価値が上がることも無いでしょう。
結局面倒なことを次の世代に先送りするだけです。
お金にならなくても早めの処分をおすすめします。
今回はここまで
最後までお読みいただきありがとうございました。
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