不動産の共有とはどういうことかご存じでしょうか?一つの不動産を複数の人が持ち合うことです。
実は、親からの相続によって、兄弟の共有になっている不動産は非常に多いのが現実です。
一方で兄弟共有がもたらす悲劇があとを絶ちません。
結論として不動産の共有はNGなのです。
今回は不動産共有の問題点と共有の解消法についてお話します。
不動産の共有状態になる原因
相続という言葉は皆さんよくご存じかと思います。
亡くなった方の財産を法定相続人が引き継ぐことを相続と言います。
ちなみに法定相続人以外の人が引き継ぐ場合には「遺贈」という言葉を使います。
もっとも一般的な例ととして、父親が亡くなった場合の法定相続分は次の表のとおりになります。
※配偶者(奥様)がいる場合の相続分
奥さんと子供がいる場合には、奥さんが1/2、子供が1/2を相続し、子供が複数いる場合には1/2を等分に分けることになります。
子供が2人の場合には奥さんが1/2、子供A1/4、子供B1/4といった具合です。
その後奥さんが亡くなった場合に、奥さんの財産は子供2人が等分に相続することになります。
主な財産が金銭であれば、お金を分けることは容易いですよね。
しかし、主な財産が自宅の土地家屋など不動産の場合には、等分に分けることが難しくなります。
ここで、1つの不動産を2人の子供が共同で所有するという「共有関係」が発生してしまいます。
この「共有」という所有の仕方が数々の問題を引き起こします。
不動産の共有がもたらす紛争
不動産を共有することで、しばしば兄弟間の紛争がおきます。
共有による紛争やもめ事の例をいくつかあげてみましょう。
家業の印刷会社を長男が継いだが、自宅兼会社の土地建物は兄弟共有になっているケース
長男は自宅兼会社に家族一緒に住みながら、家業の印刷会社に精を出していたが、弟から自宅兼会社の土地・建物を売却して金を分けることを要求されている。共有だから仕方ないが、家業を辞めるわけにもいかず困っている。
父親が亡くなった後、長男夫婦は共有で相続した実家で母親と同居し、身体の不自由な母親の面倒をずっと見てきた。
母親が亡くなるやいなや、実家に寄り付かなかった弟が実家を売却して金を半分くれと要求してきている。母親の看病や治療費に自分の労力と金銭を使ってきた長男夫婦は納得がいかない。
父親が所有していたアパートを兄弟共有で相続した。
家賃収入を兄が独り占めしている。「半分は権利があるのだから欲しい」と弟が言うと、兄は「管理の手間はこっちが全部やっているのだから、お前にやるつもりはない」と言われている。
この他にも、不動産を共有していることによって、数えきれないほどの兄弟間紛争が起こっています。
この紛争がエスカレートすると訴訟など「骨肉の争い」にまで発展し、兄弟の関係は修復不可能なほど険悪なものになってしまいます。
「うちの子供たちに限って」
という甘い考えはやめましょう。
必ず揉めます!
このように紛争になることが多い「不動産の共有」ですが、そうならないためにどうすればよいのか?
あたりまえですが、
相続の際、不動産の共有は極力避ける
相続人の将来を考えるのであれば、まずは共有にしないことを考えましょう。
必ずといっていいほど将来揉め事のタネになってしまいます。
親族間の揉め事は「深い遺恨」を残し、修復は不可能です。
共有にならないよう分ける
不動産が共有にならないような分割方法を考えましょう。兄には実家を相続させ、弟には金銭をという具合なのですが、「住宅ローンを払っていたからお金がない」という方も多いでしょう。
例えば、受取人を弟にした生命保険に入るなど、できることを考えてみましょう。
場合によっては、揉め事の原因になりそうな不動産を相続前に売ってしまう。という方法もあります。
遺言を残す
等分に分けられないような場合には必ず「遺言」を残して、共有にならないような分割の仕方を決めておきましょう。
この時に注意しなければいけないのは「遺留分」です。
兄弟以外の法定相続人には「遺留分」とし「最低限相続できる財産」が保証されています。「遺留分」は法定相続分の半分とされています。
「遺留分」を無視した「遺言」を書けば、「遺言の内容」に反して遺留分を求める裁判を起こされてしまいます。
代償分割
長男が実家の土地・建物を相続する代わりに、兄独自の財産から、弟が相続すべき財産をお金で支払うという方法です。
兄に財産があるか、相続に際して銀行から借り入れができるような場合には、この方が有効です。
既に共有になっていたら
もう既に「兄弟共有」になっている。
という場合には、揉めないうちに、なるべく早く「共有関係」を解消すべきです。
しかし、一番の問題点は共有者の同意がないと何もできないということですから、どんな方法が良いのか共有者間で話し合う必要があります。
共有関係解消の方法にはいくつかの方法があります。
分けられる不動産であれば分割する
土地であれば、分割してそれぞれ単独の所有にすることが可能です。
建物で、分割しても商品になるようなものであれば、区分所有登記にして、それぞれ単独の所有にすることが可能です。
この場合、測量士や土地家屋調査士に分割する手続きを依頼する必要があります。
売却して金銭で分ける
文字通り最も簡単な方法です。
当然、共有者全員が同意しなければできません。
一方が、もう一方の不動産持ち分を買い取る。
お金があれば(融資がつけば)買い取りたい旨の申入れをしてみましょう。
この場合、幾らで買う(売る)のかが最も大きな問題となります。
別の不動産と交換する。
複数の不動産を相続してそれらが共有になっていたり、相続財産以外の不動産を所有している場合には、交換という手法を使って共有関係の解消をすることができる場合があります。
税務上「交換の特例」に該当する場合には、譲渡税が繰り延べされるなどの恩恵を受けることも可能です。
個人が、土地や建物などの固定資産を同じ種類の固定資産と交換したときは、譲渡がなかったものとする特例があり、これを固定資産の交換の特例といいます。
引用元:国税庁HP 交換の特例
このように、財産の大小にかかわらず一つのものを共有するというのは、何かしら揉め事を引き起こす原因になります。
共有を放っておくと、次の代には共有者が増え、ますます複雑な共有関係になってしまいます。
手遅れになる前に、何かしらの対処をしておく必要がある「重大な問題」なのです。
ここに書いた、共有関係解消の方法は、あくまでも一例でしかありません。
共有人数、不動産の特性、金銭的背景などによって個別に解決方法を探っていく必要があります。
まずは不動産に詳しい人に相談することから始めてみましょう。
交渉で険悪なムードになりそうであれば、第三者に間に入ってもらうようにしたほうが良いでしょう。
もし、適当な人がいなければ、私が相談に乗ります。
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